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A Night & Life Journal

2026.03.11

スナック初心者の教科書|第41回

スナックはサードプレイス?家でも職場でもない居場所

人には、家でも職場でもない場所が必要だと言われています。

社会学では、そうした場所を 「サードプレイス(第三の場所)」 と呼びます。

家は生活の場所。
職場は仕事の場所。

そのどちらでもない場所で、人は少しだけ肩の力を抜きます。

日本では、その役割を果たしてきた場所の一つが スナック です。

小さなカウンターの店で、お酒を飲みながら他愛もない会話をする。
そこでは会社の役職も、社会的な立場もあまり意味を持ちません。

なぜスナックは、こうした居場所になりやすいのでしょうか。

この記事では、サードプレイスという考え方をもとに、スナックという場所が持つ独特の空気を整理していきます。

世代の違う人たちが同じカウンターで過ごす日本のスナックの風景
世代の違う人たちが同じカウンターで過ごす日本のスナックの風景

サードプレイスとは何か

サードプレイスという言葉は、アメリカの社会学者レイ・オルデンバーグ(Ray Oldenburg) が提唱した概念です。彼は、人の生活には次の3つの場所があると考えました。

場所役割
第一の場所家庭
第二の場所職場
第三の場所気軽に集まる居場所

この第三の場所が サードプレイス です。
サードプレイスにはいくつかの特徴があります。

  • 誰でも立ち寄れる
  • 立場や肩書きが関係ない
  • 会話が中心
  • 常連がいる
  • 長時間いても問題ない

カフェやバー、パブなどが例としてよく挙げられます。
つまりサードプレイスとは、社会的な役割から少し離れて人と関われる場所です。

スナックがサードプレイスになりやすい理由

日本のスナックは、このサードプレイスの特徴とよく似ています。
理由の一つは、店のサイズです。

多くのスナックは10席前後の小さな店です。
そのため、店にいる人同士の距離が自然と近くなります。

大きな飲食店では、隣の席の人と話すことはほとんどありません。
しかしスナックでは、同じカウンターに座っているだけで会話が始まることがあります。

もう一つの理由は、空間の役割です。
スナックでは、

  • 誰かが歌う
  • 誰かが話す
  • 誰かが聞いている

という形で、空間全体に会話が広がります。それぞれが役割を決めているわけではありませんが、自然と場が成立していきます。こうした構造が、スナックをサードプレイスに近い場所にしています。

スナックが生まれた歴史については、『なぜ日本にはスナック文化が生まれたのか|戦後から続く夜の文化』で詳しく解説しています。

スナックでは役職が消える

日本のスナックでカウンター越しに交流する客とママの様子

サードプレイスの特徴の一つは、社会的な立場が弱くなることです。
たとえば会社では、

  • 社長
  • 部長
  • 新入社員

といった役職があります。しかしスナックでは、その肩書きがあまり意味を持ちません。カウンターに座ると、みんな 「〇〇さん」 になります。年齢や職業は違っていても、同じ空間で同じ時間を過ごす。この距離感が、スナックの特徴です。

知らない人と会話が成立する理由

スナックでは、初対面の人同士が会話をすることも珍しくありません。これは不思議に感じるかもしれませんが、実はサードプレイスではよく起こることです。理由は、会話のテーマが限定されているからです。多くの場合、話題は

  • お酒
  • カラオケ
  • 今日の出来事
  • 店の雰囲気

といった、その場の出来事になります。人生の深い話をする必要はありません。それでも会話が成立するのは、同じ空間を共有しているという共通点があるからです。

なぜスナックは居心地がいいのか

日本のスナックのカウンターで静かに会話を楽しむ客たち

スナックに通う人の多くが言うのは、「なんとなく落ち着く」という感覚です。これは、スナックが特別なサービスを提供しているからではありません。
むしろ逆で、何かをしなくてもいい空間だからです。

  • 無理に会話しなくてもいい
  • 歌わなくてもいい
  • 早く帰ってもいい

自由度が高い空間は、人をリラックスさせます。そのため、仕事帰りに少しだけ立ち寄る人もいれば、長年通い続ける常連になる人もいます。

スナックの居心地の良さについては、『なぜスナックは居心地がいいのか|常連が帰ってくる“空気の設計”』でも詳しく解説しています。

スナックが長く続く理由

日本では、何十年も続くスナックが珍しくありません。これは、店の規模が小さいことも関係しています。スナックは

  • 少人数
  • 常連中心
  • 地域密着

という特徴があります。そのため、大きな広告を出さなくても、人の紹介や口コミで店が続いていきます。また、常連客にとってスナックは単なる飲み屋ではなく 「通い慣れた場所」 になります。

この関係性が、店の寿命を長くしていると言われています。

スナック特有の常連文化については、『スナックの常連とは?なり方と“愛される人”の共通点』で詳しく解説しています。

Q&A|スナックとサードプレイスに関するよくある質問

Q1. サードプレイスとは何ですか?

家庭(第一の場所)や職場(第二の場所)とは別に、人が気軽に集まる居場所のことです。カフェやバーなどが例として挙げられます。


Q2. スナックは本当にサードプレイスですか?

多くの特徴が一致しています。小規模で、会話が中心で、立場を超えた人間関係が生まれる点がサードプレイスとよく似ています。


Q3. スナック以外にもサードプレイスはありますか?

あります。カフェ、パブ、地域のコミュニティスペースなどもサードプレイスとして機能することがあります。


Check!

スナック初心者向けガイド|はじめての方はこちら

まとめ:スナックは「社会から少しだけログアウトできる場所」

世代や立場の違う人が同じ空間で過ごす日本のスナック文化

サードプレイスという言葉は少し難しく聞こえますが、意味はとてもシンプルです。

家でもない。
職場でもない。

でも、なんとなく人が集まる場所。それがサードプレイスです。
日本では、その役割を昔から担ってきた場所の一つがスナックでした。スナックでは、会社の肩書きも、社会の立場も、だいたいカウンターの上に置いてきます。

社長も、部長も、先生も、店に入れば 「〇〇さん」 です。

そして多くの人がこう言います。

「今日は一杯だけ。」

しかしそのあと、

・知らない人と世間話をして
・なぜかカラオケを歌い
・気づくと隣の人の人生相談を聞いていて

帰る頃には、だいたいこうなります。

「一杯だけ」の予定が、ボトルが入っています。

たぶんそれも含めて、スナックという文化なのだと思います。

この記事を書いた人

ハルさん | 黒服・用務員

ハルさん | 黒服・用務員

黒服担当。裏方担当。雑用担当。 だいたい何でも屋。 「ちょっとハルさん」と言われる回数が多い日は、たいてい平和ではありません。人が酔うと、なぜか私が忙しくなります。 好きな時間は23時以降。 人が少し酔って、話が哲学っぽくなり始めるあのあたり。 昔、ジャズバーで小説を書いていた作家がいたらしい。 それを聞いてから、閉店前に文章を書くのが習慣になりました。 いまのところ、文学になった気配はありません。 紅の夜には、ちゃんと物語があります。 だいたい翌朝には、なかったことになりますが。 それでもまた来るので、きっと悪い店ではないと思っています。 少なくとも、お客さんにとっては。

スナック初心者の教科書

スナック紅

この物語のつづき...

スナック紅(BENI)本店

東京でも屈指の歴史をもつ老舗スナック。

文化人に愛され、漫画やドラマの中にもそっと姿を現してきました。
『ブラックジャック』誕生の頃、このカウンターで交わされた会話があったとも言われています。

シンガー、俳優、漫画家。
夢を抱く人たちが集まり、語り、また旅立っていった場所。
「紅に通うと出世する」――そんな小さなジンクスもあります。

ここは「コンビニより温かく、家よりちょっと自由な場所」。
ただし、居心地が良すぎて最終電車を逃しても責任は持ちません。

一杯で他人、二杯で友達、三杯で家族。

住所

〒102-0074 東京都千代田区飯田橋4丁目1−2

電話番号

03-3264-1998

営業時間

19:00〜良いところまで

定休日

日曜日・祝日

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